■ 文化庁メディア芸術祭 宮本茂氏・養老孟司氏の対談
- 仕事で絵を描くか?
- 絵も描く。15年くらい前に複数のタイトルを平行して見るようになって大きく仕事のスタイルが変わったが、それ以降は、ずっと同じ感じで仕事をやっている
- 自分が作るのと同じくらいのポテンシャルの仕事を誰がどう作ってくれるのか、55歳前後から一気に先のことを考えるようになった
- 自分の作品で一番好きなものは?または一番苦労したものはなにか?
- あまりわからない。苦労は一通りしたけど、いつも楽しく作っている。頭でっかちになっている時と、現場本位で手を動かしながら考えてるときがある
- 具体的なタイトルは言えないが、裃を着てるみたいに仕上がったものはあまり好きではない。本音で考えなおして、すりあわせたものの方が、満足度が高い。
- 国際化について
- 日本のカラーをつけていないので、世界で受け入れられる。ローカライズは自然に、自分の作ったものをそのまま観てもらうことを意識している。
- 会場でゲームをやる人に手を上げてもらう→遊ぶ人:遊ばない人が9:1くらい
- 遊ばない人は年配の人、とくに女性が多い印象
- 遊ぶゲーム機 DS:Wii:360 8:7:1くらい
- 球体にすると地面の上でどこに主人公がいるかが分かりやすい
- ヨッシーがただ敵を飲み込むだけでは手応えが足りない→つかんで引っこ抜く要素
- どのくらい引っ張ったら抜けるのが気持ちいいか、みたいな手応えを調整
- 「分かってもらえたら楽しい」のに、分かってもらうことが難しいことも多いのでそのへんはよく考える
- マリオギャラクシーには240くらい星がある
- 難しいのがいいという人と、そうでない人がいる
- →そのどちらもが同じゲームで遊べるように工夫して調整するのは、本当にクリエイティブなのか?
- →割りきりながら作っているようなところもある
- アイテム100種類全部揃えるのが楽しい、みたいなタイプもいるけど、自分はアイテムを全部揃えたいとは思わない。
- 遊んでる時に楽しいのか
- 生理的に気持ちいいか
- 上手になっていくのが楽しいか
- みたいな事のほうを気にしている
- 虫の習性を知るのが楽しい。地形でも、生き物でも知らないものがいっぱいある。
- そういうものを集めると、ネタになる素材がいっぱいある。そういうものを見つけるのが楽しい
- 初めてドンキーコングを作ったとき、ゲームセンター向けにつくって、
- →100円入れてくそ!とおもってまた100円入れる
- →どうしたら再チャレンジしたくなるかを考える
- →技術が進んできて、今では電話とゲーム機のちがいがなくなってきた
- →「何を体験したら面白いか」に変わってきた。可能性が広がった。
- ゲームのルールには基本的なマナーみたいなものがある(3人死んだらゲームオーバー、とか)
- →普通はそのルールに則って作って、不都合な部分ができるとそれをなおそうとする
- →プレイヤーが死ぬとゲームが終わるというのは黎明期に誰かが勝手に決めたルール。それを守るのをやめてみると、問題が解決することがある。
- いったん白紙にもどってフラットに考えてみた結果、うまく解決できると楽しい
- 難航してるものを治すのが楽しい
- ゲームというものをどう直せばいいのかを知っているので、特に苦労することはない
- 若い人の作ったものを楽しみやすいようにアレンジすることもある。
- どこからがクリエイティブなのかはわからないけど、楽しみ方はいつも一緒
- つくるのにかかる人数は?
- ものによって違うけど、だいたい30~70人前後くらい、製作段階によって人数がかわるので一概には言い難い。
- 人月は増えるけど、人月分クリエイティブがふえるわけではない
- 自分自身、開発の判断に関するコストパフォーマンスはいいと思っている
- マリオギャラクシーの3つくらいの惑星で面白いところだけを作るなら10人くらいでできる。製品化するためにいろいろな要素を追加しようとすると、人数が増える
- 基本的な道具だけ揃っていればずっと遊んでいられるものだけど、多くの人に遊んでもらおうとおもったらいろいろなサポートが必要。そのサポート部分をつくるには、コストがかかる
- ネタをパッケージにまとめる手法がある。まとめ方にはいくつかのパターンがある。
- ◯最初のネタを集めるところがとてもたのしい(犬の飼い方とか)
- ◯新しい技術を何かに使えないか
- ◯ヨッシーに乗ってみるとうどうなるか
- ◯技術の部品を買ってきていろいろためす(モーションセンサーとか)
- いろんなやり方があるので、「やり方は決まってません」としか答えられない
- コマーシャルに興味のあった時期があり、ディスクシステムの時には自らコマーシャルを手がけた。
- →作った人がやると思い入れがありすぎて伝わらないので、やめた
- ゲームに関わっている人たちが、自分で閉塞感を生み出しているんじゃないか
- →オヤジがそれを壊す必要がある
- 自分で才能があるとは思っていない
- 山で育って、これ以上滑るとズボンが破けるとか、いろんなことが体で分かっている
- 同じ川を見ても、魚を取らない人にはわからないいいところ悪いところ含めたいろんなことが自分には見える
- 若い人は、売れるものに付きあわせることで、成長する
- 高校野球の強いチームは勝ち方を知っている。
- チームの中に自然に勝つためのノウハウみたいなのが溜まっていき、そんな空気のなかでやり方を体で覚えていく
- そういったいい環境に育てられた側面もある
- 「間」を大事にしている。
- ボタンを押したときにどんなリズムでどんな反応を返すのかは、ひとりの人間が考えないといけない
- 操作は自分ひとりで決めて、反対があっても押し切る
- 他人に任せるときには口を出さない。かわりにその人一人に一任する
- こういう部分を50人がそれぞれ口を出しながらやると、ばらばらになって気持ち悪くなる
- 「間」の取り方は関西の落語から学んだ。いいタイミングでツッコミなど
- 4コマ漫画にも鍛えられた
- 落語の3題噺みたいに、結論は決めているけどその結論を落ちまで悟られないように話を持っていく
- ゴールは決めているけど、そのゴールへ持っていく手順は4コマ漫画で鍛えられた
- いかに楽するために頭を使うか、を考えるのが楽しい
- 「解けない問題は解けない」
- 頭のいい人がすべての問題を解いてしまう、みたいなのではなく、「解ける問題に置き換えて考える」
- 社長が「次も儲かるゲームを作ってくれ」といった場合、「次も儲かって欲しい」のであって、であれば「ゲームを作らない方が儲かる」のであればそう提案する、
- こういうのを見つけるのが快感。気がつくと嬉しい
- 若い人は苦労の経験がないから残念、みたいな話に対して
- 「いろんなことを経験する、というのが人生なら、今の方がずっと有利」
- ゲーム機をリビングに置く機械にしたい
- どんどん個室に入っていく
- ゆるい感じで、miiを作るときに、絵の書けない人は興味がない、のではなく、「絵がかけない人ほど、かけたときがうれしい」
- 孫がおじいちゃんに似顔絵を作ってくれるとうれしい
- 十分参加してる。関わってくれる人が増えると嬉しい
- 全くゲームに興味のない人が、興味を持ってもらうだけでも意味がある
質疑応答
- 「どれだけ宮本茂が偉大か、ということを周りに人に知らしめたい。自分からもっと知名度を上げたいという欲はないのか」
- 「それをやったらたくさん売れる」というのであれば出てもいいけど、そうでないなら意味が無い
- 日本では「海外で有名な人」と紹介され、海外では「日本では有名な人」と紹介される。それくらいが暮らしやすくてちょうどいい
- 小学生の娘が友達とマリオを遊んでたら喧嘩を始めた。
- 「殺せ」とか「死んだ」とか「生き返った」とか言って、死生観が貧弱になるのではないかと心配
- そうやって子供同士が喧嘩してるのを見て、怖い。世界観、社会がそうなっていくのが怖い。
- 大人が楽しむのはいいけど、子どもがそうしたことを平気で口にするのはどうなのか。ゲームを作る上でもっと倫理観とか哲学観とかをかんがえられないのか?
- 自分は漫画を読んで、漫画を書いて育った。漫画も昔は似たようなことを言われてた。世の中の他のこととの関係性もある。
- 開発者内でも、生死、敵、ボスとか40~50のおっさんが言ってるのはなさけなくないか、という話も出たが、他にいい呼び方が思いつかないのでしょうがない
- ボキャブラリーが貧弱なのは変わらないといけない
- 子供が言う「死ぬ」は大人と同じニュアンスでは言ってないけど、業界からも改善していかないといけない
- ゲームは小説と違って受身なメディアではなく、インタラクティブになにをするのかを自分自身で考えていかないといけない。
- 何が起こるのか、それに対してどう対応するのかをイメージして、考えていかないといけない。
- 作る人以上に、遊ぶ人がクリエイティブになるゲームを作っていきたい
- 重いテーマだけどちゃんと考えるべき。売れるものがすべてそうなってくるのはよくないので、偏らないものを作っていかないといけない
■ 帰宅
- いま京都の国際マンガミュージアムに移動中。起きてすぐ出かけたけど間に合うかどうか不安。
- 対談終了。とてもいい刺激になった。
- しばらく京都付近をうろついてたけど、ふと思い立ってここから家まで歩いて帰ることにした。だいたい十時間くらいで着く予定。一回やってみたかった
- いま京都競馬場前を通過。先は長い…
- 京都を抜けて大阪府に入った。これで全行程の四割くらいか。思ってたよりはペースが早い
- @a_ma_ta_mami せめて夜が明けるまでには帰りたいです
- 多分いま半分くらいまできた。足も疲れてるけどそれ以上にノートPCの入った鞄を支える肩が痛くなってきた。今日は全く使う機会がなかったので置いてくるべきだった
- 往復の電車で遊ぼうと思って入れたDSiLLも、地味にダメージの追加に貢献してくれてると思う
- 五時間超えたあたりからときどき休憩しながらでないと歩けなくなっできた。ペースが落ち始めてる
- 予定の二時間遅れくらいで京橋に着いた。ここからならあと一時間もあれば帰れるかな。もう普通に電車とかがガンガン動いてる時間になってしまってるのがくやしい