2010-09-04

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自分が見てきた中では開発の効率化の話題が出ない方が少数派だったくらいに、どこの会社も「どうやって効率化するのか」という事に注力しているのが伺えた。

全体を振り返ってみると、開発の効率化の方向性は、おおざっぱに分類すると2種類あるようだった。

一つは「同じものをより安く、短期間で作る」ための効率化。

セガの「龍が如く」、サイバーコネクトツーの「ナルティメットストーム2」では、短期間でゲームを作らなくてはならない制作状況に特化した、コストの削減に注力していた。

もう一つは「より高いクオリティを実現するための作業環境を整える」ことを目的とした効率化。

アイドスのエンジンを参考に製作中のスクエニの新エンジンは、世界でもトップクラスのハイエンドなゲームを作るための環境整備・技術開発を行っているようだった。

龍が如く」「ナルティメットストーム2」では続編を作るときに、前作での作業を踏まえてより少ない人数・より短い期間で、同レベル以上のクオリティのものを作るために様々な工夫を行っていた。反面、システムの範囲内でできることに縛られやすく、新しい表現に挑戦することなどがコスト的に難しい、という欠点もあるようだった。

もう一方のスクエニの方に関して。一日目の最初のセッションで、バンナムのレールライドガンシュー開発でスクリプト言語を使ったプランナー主体の開発環境を構築した事例を見て、うまいバランスで作業フローに組み込んでいるんだなと思ったのに、スクエニの開発環境ではそもそもスクリプトすら不要で、ゲーム世界に配置されたオブジェクトのノードを繋ぎ合わせる事で、演出内用やタイミングをリアルタイムで確認しながら、ゲームでおこるイベントを作り込んでいくことができるようになっていた。

最近のゲームエンジンではあたりまえのように実装されつつある手法であるはとはいえ、こういった環境を自前で用意できる会社はさほど多くはないだろうと思う。もし世界の一線級で戦っていくのにこのレベルの環境が最低限必要になるのであれば、PS1→PS2に移行したときのように中小規模の多くの会社が淘汰されるか、もしくは何かしらのゲームエンジンを導入して対応することになりそう。

こういった効率的な作業環境が当たり前になって、アートワークの試行錯誤はデザイナだけで行えるようになり、コンテンツの中身はプランナーだけでほぼすべてを作れるようになってくると、今後のゲームプログラマの仕事として求められるのは「いかに使いやすく効率的な開発環境を整備して、デザイナーやプランナーがスムーズに作業を進められる環境を整えるか」、もしくは「デザイナー・プランナーの仕事とミドルウェアの橋渡し」のどちらかに集約されていくのかな、と思う。

もう一つ気になった点として、仮にそうやって各社が積極的に取り組んでいる効率化がすべてうまく行ったとして、その先には何が待っているのか?という視点からの話は、今回参加した中ではほとんど聞く事ができなかった。

web上での他の事例なども一通り目を通してみたけれど、CEDEC全体を通して「誰に対してどんなものを作って、どのように売っていくべきなのか」という議論は見た範囲内では非常に薄かったように感じている。

実際に十分効率的に高いクオリティのものが作れるようになったあとにはどうなっているのか、仮にそうなったときには、次は何をすべきなのか?という点について考えてみると、「本当に今までの延長線上のものをこのままのやり方で作っていて大丈夫なのか?」という疑問が頭をよぎる。

例えば、現在よく言われている「世界で売れるものを作らなくてはならない」という状況になっている根本原因は「開発コストが手に負えないくらい増大してしまった」という制作側の勝手な都合の話で、遊んでくれる人が求めた結果としてそうなった、というわけではない。

「なぜ3Dテレビが売れないのか」という問題と似ている。受け手側が欲しいと思うものではなく、制作者側の都合だけで商品開発の方向性が決まってしまうというのはある意味、不健全で筋の悪い話だなぁ、と最近よく思う。

もちろん、最初から世界中で受け入れられるものが自然に作れるような状況であれば、それは全く問題のない事だと思う。でも「海外で売れるものを作らないといけない」から何をどのように作るのかを考え始める、というやり方には違和感がある。世界で売れることを目指した結果、ゲーム機向けに発売されるゲームが身近にいる多数の人たちが気軽に遊べないようなゲームばかりになってしまうのであれば、それはどこか本末転倒な部分があるんじゃないかと感じる。

そもそもこの問題を引き起こしてる根本的な要因は、現場の努力で多少のコストを削減したくらいで解決できるような話ではないんじゃないか、とも思っている。

また、自分の立場からは「据え置きゲーム機でハイエンドなゲームを作る」という環境/状況が5年後どうなっているのか、という事を考えてみると明るい見通しが立てにくいという要素も無視しがたい。アーケードゲームをとりまく環境がこの10年くらいで急速に変わってきたのと似たような変化が、家庭用のゲームにも起こらないとは言い切れない。

日本/海外を問わず、みんなどんなゲームをどんな環境で遊びたいのか、という事についてはもう少し真剣に考えていかないといけないのではないかと思っている。

あと、旧ImagireDay関連のものはどれも現実問題からやや離れた場所の話になってしまっているような印象だった。もしこの傾向が続くなら、来年は資料だけあとで入手できるなら別のものを見に行った方が有意義なんじゃないかな、などと考えてしまったのはちょっと残念だった。

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