■ [ゲーム]人食いの大鷲トリコ
人食いの大鷲トリコをクリア。
トリコの実在感は最後まで変わらず、一緒に過ごした時間だけ思い入れが積み重なっていったのがとても印象的だった。
言葉の通じていない相手と曖昧なコミュニケーションを取って、意思疎通ができたと感じられる瞬間の嬉しさっていいなぁ、とあらためて感じた。あと、高いところを「怖い」と感じられるゲームも久しぶりなような。
終わってしまったあとは不思議な夢を見ていたような感覚になっていて、謎解きに詰まったときにふとトリコいる風景をぼーっと眺めていた時間がじわじわと心に残ってる。
■ 「事後分析:『ワンダと巨像』における情緒的キャラクタ制御」「ワンダと巨像」チームのクオリティの秘密に迫る
5.大型キャラクタの移動到達性の確保
これは、杉山氏がタッチするプログラム層の上に乗るプログラムやゲームデザイナースタッフの苦労につながる。例として、4足の巨像が円形の台に前2本足で載る(台の半径は前2本の脚の感覚とほぼ同じ)、という映像が上映された。
この場合、巨像と台の位置関係が非常にシビアで、およそ5度位置がずれてしまうと台の上に足は載らない。この問題は、上位層のプログラマと杉山氏が相談し、体の移動量や回転量にスケールをかけるシステムを実装。それを上位層のプログラムでコントロールするという手段で解決した。かなり面倒な到達の方程式を解いて、そこにパラメータを入力することで解決したという。ゲーム性を重視すればモーションを枠にはめてしまうことになり、情緒的な動きは失われてしまう。ここにも、アニメーターの作成した素材と、ゲーム性を両立しようという努力が伺える。
トリコでも、あの大きさのキャラクターを複雑な地形に違和感なく沿わせて動かすのは、考えたくないくらい大変さになっていそう。
無機質な巨像と違って生き物である以上、求められる品質も格段に上がっているはずなので、どのくらいのモーション数を用意されていて、どのくらいプログラム制御が入っているのかとても気になる。
このプロジェクトにおいては、データの集約や制御のまとめ、メモリ分配にいたるまで、デザイナーが担当している。使用の煮詰めに加え、トライ&エラーや仕様の導入に対しての膨大なデータ制御を行なう基幹となっている。キャラクタの制御で言えば、リソースの管理、モーション分岐の実装、馬や巨像のAIの制御……通常のプロジェクトではプログラマが担当する領域もあるが、これらもデザイナーが担当している。
モーションで言えば、プレーヤーキャラクタのモーションは920、馬は119、最初に登場する巨像には85のモーションデータが存在する。これをデザイナーが管理して、モーション分岐を実装しているという。これらの制御はEXCELで構築されたデータベースを使用。右にその一部があるが、C列が現在のモーション、Dがコマンド、Eが次につながるモーション、という表現になっており、キャンセルフレームや補完フレームもこのデータベースで指定している。
このデータベースのメリットは、プログラマからゲームデザインに関する仕様がおおよそ切り離されているので、仕様の作成から反映までが比較的短時間で実現できる。反面、致命的なバグをデザイナーが載せてしまうことにも繋がる。実際、今作のデバッグレポートの約3割がデザイナーによるものだったそうで、「マスターアップ前は非常に苦労した」と細野氏が吐露していた。
ワンダの時点で思ってた以上にデータドリブンな作りになっていることには当時とても驚いた。
現在求められる物量や品質を考えても、方向性としては今後もどんどんデータドリブンを推し進めていく必要があるように思う。