2005-12-08

[][]『ワンダと巨像』の映像表現と、それを支える技術 『ワンダと巨像』の映像表現と、それを支える技術 - Nao_uの日記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 『ワンダと巨像』の映像表現と、それを支える技術 - Nao_uの日記 『ワンダと巨像』の映像表現と、それを支える技術 - Nao_uの日記 のブックマークコメント

いろいろな疑問が解消した。大変ためになる。

  • モーションブラーはポストエフェクト。
  • セルフシャドウにはシャドウボリュームを使用。ICOの頃かららしい。
  • シャドウモデルはかなり大雑把でもある程度ぼかせば問題ないようだ。ゲーム中でも特に違和感は感じなかった。
  • ファーは3~6層程度。頂点単位の光源処理とボーン(?)による挙動あり。
  • 地形LODの最遠景の実装方法は、「1枚絵としての最遠方風景は、その小さく大ざっぱな最遠方モデルデータを用いて毎フレームレンダリングしている」とのこと。超ローポリゴンモデルにテクスチャを張っている?最遠景モデルの切り替えはどのタイミングで行っているのだろうか?
  • 処理に余裕のあるときにメモリ領域の再配置を行っているらしい。テクスチャなどのダブルバッファに絡むリソースはどう再配置しているのか?いっぺんにやらずに少しづつ行う?
  • 巨像とのコリジョンはやはり気合と試行錯誤の産物。
  • しがみつきのモーションはバネ振り子計算に手付けモーションを加算。よくある物理ライブラリのラグドールでも、同じような処理を加えるだけでだいぶ人形っぽさが消えると思うのだけど。
  • 巨像のアルゴリズムはツール上でスクリプト制御できるように作っているようだ。意外。
  • パーティクルのスプライトの頂点に陰影をつけると綺麗に見える。この辺はまじめにやるより適当な計算で誇張した方が綺麗に見えそう。屋外などのはっきりとした単一の方向性のある光源のシーンで有効。
  • 特殊計算で行ういんちきシェーダーはいろいろ入っている模様。VUを頂点シェーダー代わりに使えるPS2ならではの処理か。
  • できれば水面の詳しい実装も知りたかった。基本は水面下をぼかす+波のアニメーションテクスチャだと思うのだけど、ICOの頃から水の表現は綺麗で良い。

全般に、ハードウェアの特性を生かした様々な技術を駆使しているにもかかわらず、あくまで「表現したいことを実現するために技術がある」という姿勢が貫かれているのがすばらしい。

 「ワンダと巨像」でも使用されている、ファー表現、モーションブラー、加算モーション、フェアリーシェーダー、ベルベットシェーダーなどいくつかの技法は、実際のプログラミング作業に先立ち、まずは技術発案者である上田氏によるLigntWave上での簡易な検証作業を行なったうえで、それぞれの担当者に提案されるというプロセスを経て、実装と調整が行なわれている。

ワンダと巨像」を遊んでみて、プログラマによる技術主導な作り方では難しいようなアーティスティックな表現が、デザイナだけではなかなか思いつけないような独創的な技術によって達成されているのに驚いた。これだけのものを実現するのにどのようなやり取りがプログラマ-デザイナ間で行われたのかが気になっていたのだけど、上記の引用部分を見て少し納得が行った。

ディレクターである上田氏自身が自分がイメージしているものを実現するための方法論を持っているのなら実際にその技法を使ったときの出来上がりも想像しやすいはずだし、このチームはそれを実現することのできる確かな技術を持ったプログラマにも恵まれているのだろう。新しい表現手法を気軽に試せるフットワークの軽さも重要だ。この辺は、アニメーター出身でLigntWaveも使いこなす上田氏ならではの作り方なのかもしれない。

今までの仕事でもデザイナーの人から技術的なアイデアもらって新しい表現を試したりすることもあったけれど、プログラマ側もまた、ツールだけ作ってパラメータ調整をデザイナ側に投げっ放すのではなく、もっとデザイン面にまで踏み込んだ提案を行って相互に緊密なやり取りを深めていく必要があるのだろう。これまでに見たことのないようなすばらしいビジュアルを実現するには、技術のわかるデザイナーと、デザインがわかるプログラマの連携が必要になる。