■ 宮本茂×堀井雄二
ドラクエ4発売直前くらいのインタビュー記事。
宮本: あー、わかる。「ゼルダ」はディスクだったでしょ。最初からセーブができたんです。
「ゼルダ」と「I」の発売時期は、ほぼ同時期でしょ。あの頃パスワードでやってるのが逆に
かわいそうで。
堀井: データ容量の制限でも、えらい苦労しましたよ。
宮本: 「ポートピア」なんか、データの詰め方が凄かったですね。
堀井: ええ、最終段階まで余分なデータを削りに削ってね。でも、まだ多かった。
オーバーしたのは2キロバイト、2000文字分。メッセージは丁度1000ぐらいあったんで、
まず片っ端から接尾語を削った。この文章は「を」は要らない。最後の「よ」も要らないん
じゃないかって(笑)
宮本: うちは逆のことをしたことあります。「スーパーマリオ」で、2バイト残ってるから、もったい
ないから何か入れようとか(笑)
堀井: 自分が考えてたアイデアで、先にやられてるのを見つけて困ることってありますね。
「IV」でも、やろうとしてたことを他のゲームで先にやられちゃってて、こりゃ切らなきゃ
なんねーな、なんてこともありました。
宮本: 似てたら、切りますか。
堀井: 切りますよ。
宮本: これは、そっちより先に考えてたんだって、堂々と入れませんか。僕はね、期限までの
時間との兼ね合いもありますが、他人がやってても出すんですよ、そのまま。同じ事を
考えている人がいるんだなって。
堀井: 規模にもよるよね。そのアイデアが占める要素。どーでもいいのだったらあっさり切っ
ちゃう。
宮本: 『スーパーマリオ』を作ってるときに、アーケードで『魔界村』が出たんですよね。あれも
やっぱり、1回当たってもやられないんです。で、同じことやってるなあと思ったんだけど、
あのシステムは切れない。ゲームが壊れてしまいますからね。
宮本: 僕達は主にアクションゲーム作ってたんで、凄くオリジナリティってことにこだわるんです。
ここは真似してるけど実質的には真似じゃないとか、ここは完全に新しい部分だとか。
システムを作る上で、プライドを持って仕事をしてるんですよ。RPGの場合、システム自体は
一応もう承認されてますよね。誰が使ってもいいみたいな、そういうフィールドでしょ。でも
だからといってシステムをそのまま利用して、お話のほうを広げていくだけでいいのかというと
その辺が難しいですよね。あまり新しいことをやるよりは、話がしっかりしてた方がいいって
いうユーザーと、やっぱり新しいことをして欲しいってユーザーの狭間でしょ、今。
堀井: 難易度調整がこれまた難しい。例えばダンジョンなんか紙に書いちゃうと、どうしても
難易度が高くなっちゃうんです。簡単だと思って自分で実際にプレイしてみると、これが
とんでもなく難しかったり。
宮本: うちの場合ゲームが完成した時点で、常に難易度を20パーセント下げるのが目標です。
堀井: あらかじめそうやって決めてあるんですか?
宮本: そうですね。予定してたところから必ず20パーセント引いて出す、といっても具体的
には基準がハッキリしないですけど(笑)、アクションゲームの場合だと、最初にまず
2面目を作るんですよ。1面目っていうのは、全部作り終わってから作るんです。
堀井: なるほどね。今、実はファミ坊と一緒にボードゲームを作ってるんですよ。最初1面を
作ったんだけど、結構難しい。じゃあ練習面を作ろうって作ったんです。そうしたら、これ
でもまだ難しい。で、結局最初に作ったのが4面目になっちゃった(笑)
宮本: そういう意味では、アクションゲームのデモも一緒ですよね。自分がやってる気になる
デモと、無理やり引っ張られてる感じのするデモとある。まるで自分の操作じゃないみたい
に動くのってやっぱりイヤなんです。だから、できるだけギリギリまでプレイヤーが主人公を
動かせるようにしてやりたい。マリオが旗に掴まってからスーと降りてきてお城に入るでしょ。
あの感じって本当はすごくイヤなんです。できれば自分でお城に入りたいんですよ。
堀井: アクションゲームにもそういうのあるんだ。
宮本: 「R-TYPE」のデモって上手いんですよね。なんとなく、ずーっとドックに格納されてた
みたいでね。勝手に動かされてもなんとなく納得がいく。その間もずっと弾が撃てるでしょ。
自分達ので言えば「リンク」のデモはあんまりいいデモじゃない。自分でやったという
達成感よりは、ただ見てるって感じ。多分、今堀井さんが言ったことと同じですよ。