■ 自分をゲームにするクリエイター・・・平林久和「ゲームの未来を語る」第4回
毎日の食生活を、しりとりにして過ごしている人物がいます。
口にした食品名の最後の文字が、次に食べるモノの最初の文字になっていなくてはいけません。「しりとり食生活」と彼は呼んでいます。
すると、どういう食生活になるか?
[ぼんじり]→[りんご]→[ごぼうそば]→[バンバンジーサラダ]→[ダイジェスティブチョコビス]→[スープカリー]→[リーフパイ]→[いかめし]→[しょうがあめ]→[めかじき]→[キャラメルラテ]→「てりやきチキンピザ]→[ザーサイ]→[いもけんぴ]→[ピュレグミ]を食べて暮らすことになります。ただし、生命に危険があるので、しりとりに関係なく[水]だけは特例で飲んでよいことになっています。
そんな生活をする人物とは、後藤裕之氏。
プロフィールにも書かれている通り、ことばのパズル『もじぴったん』のゲームデザイナーです。
■ 『もじぴったん』開発者ロングインタビュー.
――:そうそう! 聞けば後藤さん、円周率暗唱世界記録(42,195 桁!)の記録を持つ男として、ギネスブックに載っているそうですが?
後藤裕之氏(以下、敬称略):昔から誰もやらないようなことに敢えてチャレンジするのが好きでして。ギネスブックを小学生の頃から読んでいるんですけど、大学生時代のヒマな時期――っていうか、学校の勉強がヤだなって思っていた時期――に、熱中できそうなコトを探してギネスブックをパラパラめくっていたら、「円周率の暗唱」に目が止まったんです。当時の記録は4万桁だったので、一日100桁くらいずつ覚えていけば、1年ちょっとくらいで記録更新できるかな、と思ってやり始めたんですけどね。で、"若者が何かにチャレンジする軌跡を追う"という趣旨のTVのドキュメント番組にたまたま出演することになって…。
――:その番組の中で、記録を更新したってコトですね。
後藤:ですね。あれは95年のコトでした。ちなみに、現在もまだ記録を抜かれていないようですね。
(注:2003年のインタービュー記事なので現在は記録更新されているらしい)
――:ところで、『もじぴったん』の辞書に収録されている言葉は、どういった基準で採用されたのでしょうか?
後藤:中学生が使う辞書は、だいたい5万語収録されているんですけど、このレベルの辞書に入っている言葉は、放送禁止用語っぽいモノでなければすべて入れましたね。当初は、その5万語でゲームを作っていたんですけど、社内のアンケートで「何でこの言葉が入ってないんだ!?」といった意見が多かったんですよ。例えば「カレー」と「カツ」という言葉は入っているんですけど、「カツカレー」は入っていなかったり。「カツカレー」という言葉は辞書に載っていないんですよね。「野球」があっても「野球部」はなかったり、とか。誰でも知っているけど辞書に載っていない、そんな言葉が想像以上にあったことが分かったんです。
で、そんな言葉も補完しなくては! と思い立ち、それからは日常生活の中で見つけた言葉――電車内の中吊り広告や、看板などで見つけた言葉とか、ですね――をメモっては、会社に着くなり辞書に入れていきました。
――:…独りで作ったんですよね? その辞書。
後藤:そうですね。
――:…すごいですね。
中村:普通の人なら、3人分から5人分の働きを。
リンク先が消えてたのでWebArchiveから。「ふたりのもじぴったん」の歌詞もこの人の作詞だったんだ。