2006-04-04

[][][][]大規模な開発現場におけるゲームの作られ方 大規模な開発現場におけるゲームの作られ方 - Nao_uの日記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 大規模な開発現場におけるゲームの作られ方 - Nao_uの日記 大規模な開発現場におけるゲームの作られ方 - Nao_uの日記 のブックマークコメント

ちょっと前のファミ通FF12の開発者インタビューで、アートディレクターの人が「FF12はクリアーしましたか?」という質問に対して「まだ3分の1くらいまでしか・・・」「発売日に購入してゆっくり遊びます」などと答えていたのを見て驚いた。自分の作ったものに関して、開発段階の部分を切り取って見たときの印象と、ある程度流れができて全体の進行の中で見たときの印象とでは違って見えることはけっこう多い。自分の作ったものがゲーム本編の流れの中でどのように登場して、その場面でどういったイメージを与えているのかを把握しないままに完成させてしまって商品として売ることができてしまうものなんだなぁ、というのは新鮮に感じた。

トップの人がこういう作り方をしている状況下で、おそらく100人を超えるであろう大人数のスタッフたちが、自分の作っているものがゲームの中のどんなシチュエーションでどのように使われているのかをどれくらい把握できているのか、ちょっと気になってきた。

作っている過程でそこだけ見ればとてもクオリティが高いけれど、全体の流れからすると浮いて見える、というような部分もあるだろうし、逆に単体で見たときにはこれはちょっと微妙かも?と思っていたような絵や仕様が、通して遊んでみると自分の想像していたのとは違った形で綺麗に収まっていて、驚くこともあったりする。FF12のような通常のプレイでも60時間を越えるような規模の大きいゲームだと、開発中にざっと一通り遊んでみるだけでも大変だったりするのだろうけれど、それでも通してプレイしてみないとわからないことだって、きっといろいろあるはずだろう。

とりあえずこのインタビューを見て思い出した別のインタビュー記事から一つ引用。

宮本茂さんはユーザーの評判が出る前に

反省会を開くとお聞きしましたよ。

さらりと書いてあるけれど、これをちゃんと実行しているのであれば本当にすごいことだし、反省点を見つけ出して次につなぐ、という意味ではものすごく有意義なことなんだろうと思う。


あと、他にも受け答えで気になる点がいくつかあった。こういったインタビューに対して揚げ足を取るようなツッコミを入れるのは野暮なことかもしれないけれど、ファミ通の記事から2つほど引用してみる。

  • ハードの性能は限界まで使い切ったと?

皆葉 今回は開発当初から限界ギリギリまで性能を使いきろうとしました。バトルと移動を同一画面で行うというのは、早い段階で決まっていましたので、その影響でグラフィックに使える性能も少ないとわかっていました。グラフィックの作り方も今までと異なり、表示されたときにベストになるようにしています。

素朴な疑問だけど、それなら今まではどのようなときにベストに見えるように作ってたんだろう?

  • 背景を作る際は、実際にプレイしているユーザーの視点などの感覚は意識されますか?

上国料 もちろん非常に考えます。作っているときに綺麗に見える風景と、実際にプレイ中に見て美しい風景は別ですからね。あと、ゲームをプレイしているときは、背景はさほど注意して見られないというのが、僕らの定説です。しかし、実際に旅行に言った人たちは風景を見ますし、世界遺産に行ったら感動しますよね。これと近い感覚を再現したいと思っていました。

できることならこの段階で「定説」などといって思考停止せずに、「ゲームをプレイしているときは、背景はさほど注意して見られない」理由は何故なのか、ということまで考えてくれるととても助かったのだけど。ここで考えるのをやめてしまったら、本当に「さほど注意して見てもらえない」程度のものになってしまうかもしれないし。

ただ美しい風景を作ってそれで終わり、というわけではなく、その効果が最大限に生かされるような方法を考えていくことも、アートディレクションの大切な仕事であるように思う。とりあえず、問題の一つであるマップ構成に関しては、「レーダーやMap画面を見ればわかるだろう」というのはあくまで補助的な回避策でしかなく、本当に他に方法がなくてどうしようもないときの最後の手段だ、くらいに考えておくべきなんだろう。

FF12のような特殊なプロジェクトは開発の規模も他に類をみないほど大きいものだし、そのために仕事の進め方や考え方が違ってくる部分も大きかったりはするのだろうけど、どんな現場であれ、このようなことについて考えを巡らせることだけは忘れないようにしていきたい、と思う。

製作者インタビュー:松野泰己 立ち向かっていくみんなのために 製作者インタビュー:松野泰己 立ち向かっていくみんなのために - Nao_uの日記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 製作者インタビュー:松野泰己 立ち向かっていくみんなのために - Nao_uの日記 製作者インタビュー:松野泰己 立ち向かっていくみんなのために - Nao_uの日記 のブックマークコメント

松野 うちの場合は発売の前に、

デバックも兼ねてモニターの

アルバイトを雇うんですが、

彼らからいろんな感想をもらいます。

彼らの、少しでもゲームを

よくしたいっていう気持ちは

我々と一緒ですんで、

いろんな意見を出してくれるんです。

その中から実現できるもの、

できないものの判断をしていくんですけど、

やっぱりどうしてもその中で

「ああ、やっぱりこれは直した方がいいよね」

って思いながらも時間がないから

直せないことって、あるんです。

そういう心に引っかかってるものがあって、

あとあとやっぱり消費者である

ユーザーから同じ意見を

指摘をされることがある。

でも、その点というのは、

やっぱり開発スタッフの間でも

意見が食い違うわけですよ。

僕はやっぱりこれは直した方がいいと思う、

でもスタッフは

「いや、松野さんこれはもういいんですよ」

って言うこともある。

ほーらユーザーから言われたぞ、

っていうところで、

もう一回反省するんです。

ほぼ日 モニターの声をちゃんと

フィードバックしようとするんですね。

松野 今回「プロデューサー」という

ある種えらい立場になったんですが、

そうすると、自分が作ってる時と比較して

周りの意見を大切にしようと思うんです。

自分が現場にどっぷり使ってると、

確かに彼らと同じように

「そんなもの直す必要ありませんよ」

って話になるんですよ。

ほぼ日 松野さんをよく知るスタッフの方から、

今回の松野さんは、

反対意見が出たとき、

「いや、これでいいんだ」

と強く進めることをせずに

スタッフの意見を

フィードバックしながら作られたと

聞きましたよ。

松野 1回作って、「ほらね」って言うことで

最終的にはわかってもらいますよ。

どうしても譲れないラインはあるので、

もうそこは最後は

「お前らが何と言ったって、こうだ」

っていう言い方をします。

でも、基本的には彼らの自主性がないと

作り手が嫌々やるのって

絶対嫌なものにしかならないんですよ。

僕自身がそういうふうに押し付けられたら、

やっぱり嫌々作ったものって

多分おもしろくないんで。

ほぼ日 なるほど。

「俺が間違ってた、ごめん!」

ってことはあるんですか?

松野 あ、それもありますよ。

そういう意味では今回の

ジャッジメントシステムっていうのは

元々僕が考案したものなんですけど、

やっぱり僕の意図っていうのを

正確に伝えられなかった。

出来上がって来るものに対する

コントロールもちょっと甘かった。

逆に彼らにしてみると

「やっぱりほらここは指摘されたでしょ」

みたいな感じになってて

「あ、ごめんごめん」って言いながら

じゃあ北米版はこうしようとかいう感じで

進めているんです。

ほぼ日 ジャッジメントシステムにかんしては

「RPGの世界では画期的なことなんだろうな」

という印象を受けました。

ただ、画期的なことは

賛否両論あるんだろうな、とも。

松野 確かにユーザーから言わせると、

なんでこんな面倒くさいシステムを

入れたのかっていう声はあると思います。

何でしょうね、うーん‥‥。

これは考え方だと思うんですけど、

どこかに1個くらい毒がないと

個性がないと思うんですよ。

ほぼ日 おお!

松野 もしくは思想というか。

そのほくろが可愛い、

みたいなことがあるじゃないですか(笑)。

必ず批判をされるのが分かっていても

毒をどこかに入れたくなるっていうのが

僕の性分でして。

今回そういう意味では

僕のジャッジメントシステムっていうのは

毒、なんですね。