2006-11-24

なぜ新しいゲーム機を買うのか なぜ新しいゲーム機を買うのか - Nao_uの日記 を含むブックマーク はてなブックマーク - なぜ新しいゲーム機を買うのか - Nao_uの日記 なぜ新しいゲーム機を買うのか - Nao_uの日記 のブックマークコメント

昨日会社の人と飲みに行った席で「なぜ自腹でお金を出してまで、わざわざ値段の高い新型のゲーム機を買ったりするのか」という話題になった。自分自身、新しいゲーム機が出たときには可能な限り早い時期に購入して実際に触ってみるように心がけているのだけど、話をしている過程で、それは決して不毛なマニアの収集欲を満たすためにそうしているわけではない、という点に関しては大きな誤解を受けていた気配を感じた。

自分としては、仮にも職業としてゲームを作っている人間であるなら、仕事を進める上で正しい判断を行うためにも、できるかぎりいま市場に広く出回っているものはどのようなものであり、それはどういった人よってどのような場面で使われ、使っている人はそれについてどのように評価したり感じたりしているのか、という点については肌感覚で知っておく必要があるように思っている。

株を仕事としている人が普段から当たり前に日経新聞を取ってWBSを見たりするのと同じように、仮にもゲームを生業としているのであれば、それ相応のアンテナを常に伸ばしておく必要があるはずだ、とは強く思う。

いまどきどこの会社にでもおいてあるであろう次世代機の本体で誰かが買ってきたソフトを数分遊んでみただけではわかった気分になれても本当には理解できず、自宅で購入して継続的に遊んでみることをしないと見えてこないことだって、たくさんあるはずだろう。

必ずしも全員がそうである必要はないにしても、特に意思決定や立案を行う必要のあるリーダーやそれに近い場所にいる人間ほど、報告書の数字やあいまいな伝聞だけでなく、実際の現場では何がどのように行われていて、今後はどういった方向に進もうとしてるのかという感覚を、視野を広く取りながら何らかの方法でしっかりと掴んでおく必要があるに違いない。

── 外部情報はインターネットから入手できませんか。

 外部の情報は全く混沌としています。それを得るには、自ら外へ出て実際に見て、検証することです。報告書に頼るのではなく、時間をかけて消費者を見ることです。長年の友人の一人が、日本の大手エレクトロニクス企業にいるのですが、そこではトップマネジメントが一日かけて消費者の一人ひとりを観察するのだそうです。あらゆる電化製品を販売している東京のある地区をご存知でしょう。経営トップはそこにでかけ、他社製品を買う消費者を観察したり、話かけたりするそうです。

 「なぜあなたはこの製品を買うのですか、どんな商品を探しているのですか、あなたが大事だと思う点は何ですか」という具合に。


飲み会の席で感じた視界の狭さが問題になりそうな具体例の一つとして、次世代機と呼ばれているゲーム機を実際に自分自身で購入して使っていない人は「最近のゲーム機はゲームソフトのディスクを入れなくても使える様々な機能を持っていて、現状ではそれぞれのハードごとに提供されているサービスの内容や質は大きく違う」という件に関する認識が薄いのではないか、という点が気になった。

そもそも昔ながらの「一本のソフトウェア内で完結する世界」しか認識できていない人がそういったサービスに触れたことのない状態で、現状の利点や問題点を踏まえた上で今整備されつつあるネットワークやインフラを絡めた新しい体験ができるような企画のネタを立案したりすることは難しいだろうし、それが組織内でより上位にいる人であればなおさら、そういったネタに対してそれが適切なものであるのかどうかを経営的に判断したり、プロデューサー的視点で改善点を指摘する事だって難しくなってくるだろう。

もし仮に何らかの形で大きく環境が変わりつつあるような状況下であったとすれば、その視野の狭さから適切な進むべき方向の判断に失敗してしまうことでチャンスロスを起こしたり、新しい世界に対して大きく出遅れてしまうという重いペナルティを背負ってしまう危険さえある。

本当の専門家。単に詳しいだけではなくて、いろいろな人から頼られる役に立つ人。

こういう人は、いろいろな知識を可能な限り「不自由さ」を付加しない形で記憶していて、その話題が「泳いだ」姿、「走った」姿、「重いものを持ち上げている」姿というのをリアルに想像できて、相手にそれを伝える能力が優れているのではないかと思う。

昔、ムツゴロウさんのエッセイか何かで、「鯨の種類を100種類いえる子供よりも、本物の鯨を1種類見たことのある子供の方が、何倍も貴重で、面白い話を語れる」なんていう内容のことを書いていた。

当時は厨房だったから、「どう考えたって知識100倍持ってる奴の勝ちだろ」なんて考えてたけれど、やっぱり逆。

鯨の知識をネットで調べるのは簡単だけれど、本物に出会うというのは「どう」なのか。

検索しても分からないことを語れる人こそが専門家。人を集められるのは、そういう話ができる人。

ネットや報告書から知識だけ得るよりも、実際に体験した人の話を聞くほうがはるかに生きた情報が手に入るだろうし、「百聞は一見にしかず」の言葉どおり、時間が許すのであれば自分自身が直接触って体験してみることこそが、そのものについてよく知るための最も効率的な方法になるだろう。少なくとも、自分がその分野で食べていくために最低限必要な情報くらいは。

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