2006-11-13

[][]Gears of War Gears of War - Nao_uの日記 を含むブックマーク はてなブックマーク - Gears of War - Nao_uの日記 Gears of War - Nao_uの日記 のブックマークコメント

映像面だけ見ても同時期に発売されている他のゲームから頭一つ飛びぬけている。ディティール法線マップとブラーをうまく使った高密度・高解像度感のある画面と、綿密に調整されたカメラの動きによって得られる迫力は、動いているところをちょっと見ただけでも一目で「次世代」と感じられる、インパクトのある映像に仕上がっている。

映像だけでなくゲームデザイン面に関しても、既存の多くのゲームを研究・分析したうえでいろいろ新しい要素を取り入れつつも、操作はできる限りシンプルで遊びやすくなるような工夫がなされている。これまでのFPSで「あたりまえ」とされていた要素をもう一度噛み砕いて再考し、追加する要素・削る要素を厳選して、既存のFPS/TPSの枠にとらわれない新しいプレイ感覚を作り出しているようだ。

今年のE3の時期の記事。正直、これをみた時点では、よくある外人さんが述べるお題目だけのゲームデザイン論を、最新技術てんこ盛りだけど処理が重くて企画自由度の低いエンジンで実装した、Doom3みたいなゲームになっているのではないか、と甘く見ていた。

完成版に近い実際のプレイ動画がネットに上がり、プレス向けの体験会の評判もかなり好評であることがわかってきたあたりから、もしかしてけっこう良いデキになってるのかな?とは思い始めていたものの、まさかここまで丁寧でバランスのとれたゲームに仕上がっていたとは想像の範疇外だった。

背景のライティングや影落しに関しては、物理的な正確さよりもこのゲーム独自の絵作りのほうが重視されていて、特に床と壁や柱の接合部などは不自然で必ずしもリアルな表現ではないものの、コントラストの強い絵作りで他のゲームとは違った独特の雰囲気を醸し出している。このライティングは、最近のリアル系ゲームでよく見かける、静的に計算された背景と、動いたり壊れたりするモデルの光の当たり方の不整合によって違和感のある絵になってしまうような事態を避けるのにも役立っているようだ。懸念されていたフレームレートも、プレイ時にはほとんど気にならないレベルまで改善されていた。

Unreal Engineの性能の都合で、高クオリティながらも背景ポリゴンや敵モデルがあまり沢山出せないことがゲームデザインの障害になっているかと思いきや、限られた空間と人数を最大限に生かし、遊ぶ人の快適さを第一に考えながら、シンプルな操作で見ているだけでも楽しい多彩なアクションが行えるような作りになっている。

高度な技術を生かした絵作りからリソースの割り振り、ゲームデザインに至るまで、ゲーム全体が本当に見事としか言いようのないバランス感覚で組み立てられた、とてもレベルの高い作品に仕上がっているようだ。

このゲームで始めて導入された要素に、わかりやすく一言で説明できる類のものがあまり見当たらないためにこのような言い方がされたのかもしれない。しかし、逆に考えれば「一言では説明できない」ほどに多種多様な要素がうまく絡み合って、このゲームの総合的な完成度の高さが生み出されている、ともいえるだろう。

ついに海外の人も、一つ一つの質の高い部品を、トータルパッケージでの完成度を重視しながら丁寧に組み上げるような制作手法が取れるようになってきたようだ。以前に『God of War』を遊んだときにも似たようなことを感じたけれど、今回のものはさらに完成度が高い。*1

昔からそういった職人芸的な作りこみを続けてきた本家の国の人間としては、こういったゲームから盗める要素があればそれを取り入れつつ、今後も向こうの人の想像を超えるような新しいネタや手法でもって、反撃を試みていかないといけないんだろう。

*1:それでも、幸か不幸か、おそらく『God of War』と同じような理由でこのゲームが日本で広く受け入れられることはないだろうけれど。