2005-10-17

太陽系シミュレーションと宇宙の粘性(その1) 太陽系シミュレーションと宇宙の粘性(その1) - Nao_uの日記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 太陽系シミュレーションと宇宙の粘性(その1) - Nao_uの日記 太陽系シミュレーションと宇宙の粘性(その1) - Nao_uの日記 のブックマークコメント

自分の昔からの素朴な疑問として、

  • なぜ銀河系や太陽系は円盤状に広がっていて一方向に回転していているのか?
  • 太陽系のすべての惑星の公転面が1平面に収まっているのはなぜか?

というものがあった。

昨日の「Mitaka」で見てもわかるように、我々の銀河系は円盤状になっていて全体が一方向に回転しているし、太陽系のすべての惑星の公転面も、水星から冥王星まで小惑星も含めてほぼ1平面に収まっている。他の銀河系も多かれ少なかれたいていは似たような形状をしているので、自分たちの太陽系だけが偶然そのような形になったのだとは思いにくい。なにか一般的な理由があるはずだ。

しかし、宇宙がビッグバンで始まって一点から放射状に飛び散ったのだとしたら、球状になることはあっても円盤状になることは考えにくい。そもそも、爆散の直線運動から円盤状の回転運動が生まれることはあるのだろうか?

以前にその疑問の答えを探るために、数万個の粒子を万有引力の法則にしたがって動かせば太陽系のようなものができるのか、という実験プログラムを書いたことがある。引力にしたがって動き、ある程度以上近づいた粒子同士は衝突したとみなして質量・速度を合成して一つに統合する、というごく単純なアルゴリズムのプログラムだけど、実行してみるといろいろと面白いことがわかった。

初期状態で一点から爆散する力を与えると、中心近くにコアとなる大きめの天体が生まれることもあるものの、ほとんどの場合、発散して永遠に飛び散るか、または収束はするものの太陽系や銀河とはまったく似ていないランダムに飛び回る星系に落ち着いてしまう。そのまま長期間放置していても、回転方向が一様になりそうな気配は見られない。(もしかしたら球状星団はこのような状態なのかも?)

一方、初期値として全体に回転ベクトルを与えてやると、密度のひずみが増幅して回転軸を中心に円盤状に収縮する傾向が見られた。そのまま長期間置いておくと、中心近くに金星、水星のような公転周期の短い小さな惑星が生まれ、遠くには木星のような公転周期の長くて重い惑星や楕円軌道の彗星のようなものが発生し、銀河系や太陽系とよく似た惑星系が構築できた。ちょうど、Mitakaで100天文単位くらいの太陽系全景を見ながら一年単位で時間を進めているときと同じような状態。小惑星群の形や動きもよく似ている。また、途中経過の平面に収束する前の状態は、銀河とよく似た形になっている。

このような結果から、粒子群がある程度統一された方向に回転していれば、長い時間の後には全体が自然に単一の公転面を持つ円盤状に収束する傾向がある、ということがわかった。

それでは、その全体の回転運動の源は何なのか?

いまのところの予想としては、この宇宙が生まれたときにはほぼ一様だった爆風のわずかな密度のムラが重力によって増幅され、中のチリやガスが流体のように作用してその粘性によって渦ができたのではないか、と想像している。川の流れがちょっとした抵抗によって渦巻くように、宇宙のなかでもたまたま星やブラックホールなどの重力のひずみによって生まれた密度のムラが渦を引き起こし、その結果円盤状の銀河や太陽系が生まれたのではないだろうか。