2005-08-07

ネットワークによる情報化とゲームへの影響 ネットワークによる情報化とゲームへの影響 - Nao_uの日記 を含むブックマーク はてなブックマーク - ネットワークによる情報化とゲームへの影響 - Nao_uの日記 ネットワークによる情報化とゲームへの影響 - Nao_uの日記 のブックマークコメント

ここで疑問に思われるのは、なぜ加野瀬さんの示された実例が MMORPG の話ばかりなのか?ということです。加野瀬さんの例示ばかりではなく、「ネットによっていきなり世界統一ランキングに放り込まれると努力するモチベーションを持ちにくくなる」にトラックバックやリンクされた記事の中で、加野瀬さんの意見に賛同している記事は、基本的に MMORPG での事例について書かれているものばかりです。もし、世界統一ランキングに放り込まれた人々がモチベーションを失うというのなら、ネット= MMORPG ではないのだから、もっと他の事例が出てきてもよさそうなものです。

http://sionne.just-size.jp/rnote/rnote.php?u=2005/08/0508070331.htmより

自分は恥ずかしながら未だMMORPGというものを遊んだことがないし、この話題の上流部分ではMMORPGについて書かれたものは少なかったように思うけれど、「ネットワークに関わりのあるゲーム」というくくりで考えるといまやどんな形であれネットと無縁でいられるゲームは皆無なので、ゲーム全般に関しての情報化の影響を考えてみることは無意味ではないだろうという名目でもう少し考察を続けてみる。

もともとの話のネタはネットワークの普及によって将棋の世界がどう変わったか、という話だったけれどよく考えてみたら将棋もゲームの一種ではあるので、似た部分が出てくるのは当然といえば当然かもしれない。「プロゲーマー」がもっと一般化したならば、ゲームの世界でも同種の問題が議論されるときも来るかもしれない。(すでにある?)

とりあえず「決断力」の本文からの引用と思われるところの孫引用より。

以前の勝負では、すでに知られていることに、自分の思考やアイデアをプラスして戦った。だが体系化の進歩によって、単にその差し手を知らなかった、研究していなかったというだけで勝負がつくようになった。最先端の知識や情報を「知っている」という、その一点だけで決着がついてしまう。相手に負けるのは、自分が知識や情報の収集を怠ったためだと言われても仕方がない。

今はどんな画期的な戦術でも、情報はどんどん流れて、すぐに対策を練られてしまう。昔は、たとえば、東京にいて大阪の棋譜が届くまでに三か月とか半年かかった。だから、その間は知られていない新戦法としてある程度星が稼げたが、今はそうはいかない。

極端な話、明日にはもう盤に並べられて、みんなが知っていて、こうやったほうがいいと、研究され尽くす状態である。だから、一つの戦法が一年とか二年とか、長い寿命を保つことはない。極論すれば、情報化時代の今の将棋は、新手一生から新手一回になってしまったのだ。

ちょうど、上記のような話は対戦格闘ゲームの話題だと思って読み替えても何の違和感もない。

ゲームの攻略や解析が進むと、こうしたシステムの穴のようなものをいくつ知っているかで勝敗が決まってしまうことが多くなる。今となっては初めてスト2の対戦台が出たころのような牧歌的な対戦はもう望めない。経験者はこれまでの経験も含めてあっというまにレベルが上がってしまうし、そうでない人は敷居が高すぎてその世界に入ることすらできなくなる。似たものが続くと飽きが出てくるのも避けられないし、このような現象はおそらくゲームが極まってくると必ず起こってしまう避け得ない運命のようなものであり、同ジャンルの新作が出てもすぐに似たようなことが起こるなら、それはもうそのジャンル自体の「種の寿命」のようなものが迫っているのかもしれない*1。激しい情報の流通はその寿命の流れを加速する。

極端な攻略が必要な縦STGに関しても同じような傾向はあるし、このような流れが少なくともアーケードゲームの陳腐化の加速と衰退の一因になっているのは確かだと思う。「そんなのは一部のマニアだけの話だ」という見方もできるけれど、縦STGや対戦ゲームほど顕著でなく、程度の差はあるにしても家庭用ゲームでも似たような側面はあるように思う。

それによってモチベーションはどうなるのかという話の是非はともかく、少なくとも「将棋」と「ゲーム」という分野に関しては攻略が情報の流通の影響を受けやすいのは確かだし、それに関わる者としてはその影響があることをあらかじめ織り込んでおく必要があるだろう。将棋に比べて圧倒的に寿命の短いコンピューターゲームにおいて、ただでさえ短いライフサイクルの終わりをネットが加速する、というのは無視できない要素だし、加速するだけならまだしも、その速度についてこれなくてプレイ人口が減る、というのはどうにかして避けたい事象であるように思う。作り手側が単純に「より面白いゲームにする」ために良かれと思ってやっていることが裏目に出ていることも多いはずなので、できることなら目先の話だけでなくずっと先まで見越して考えていけるようにしたい。それでも、そう考えて失敗している例もたまに見るし、じゃあ具体的にどうすればいいのか?といわれるとまだ何も思いついてはいないけど。

それとはやや違う話になるけど、「体験版のROMを解析した結果わかった本編のネタバレ情報がネットに流出」とか「クリア特典の画像やムービーが発売前にネットで公開される」などの、以前であればごくごく一部のマニアの中で止まっていた情報がインターネットの存在によってあっという間に全世界に伝わってしまうというような事例もある。どうせネットでそういったレア情報が出回ってしまうのなら、「プレイヤーの絵が変わるだけ」みたいなその情報や画像を知ってしまうと価値が薄れてしまうオマケはなるべく避けるようにして、そのような情報が流れることによって逆に「そのオマケを自分で体験したい!」というモチベーションになるような仕掛けを組み込んでいくことを考えるほうが健全かもしれない。今後はソーシャルな面も含めてネットなどに情報が流れることによってよりモチベーションが上がる、というような工夫も考えていかなくてはならないのだろうと思う。

あと、「原典に当たらずに議論を展開している」という指摘はとても耳の痛い話で、反省している。「決断力」もamazonのカートには入っているけれど、ある程度数がたまってから注文することにしているのでまだ手に取って読めていない。話題の引用元が「決断力」の本文からでなかったりするのもまた話がややこしくなっている原因であるようにも思う。以前にも別の場所でリンク元の原典に当たらずに誤解が云々、という話があったようなので今後は注意するようにしたい。(などといいながらもまた他のサイトの引用からの引用を元に話を進めるのはどうなのか?)この本についてもいろいろ言われているようだけど、最初に紹介されていた他のトピックにも興味深いものが多かったのでなるべく早く読んでみたい。

あと、ゲームの話とは別に「世界ランキングに放り込まれたからってほんとにやる気なくしたりするか?」という点については他に少し思うところはあるのでまた機会を改めて。

*1:チェスでも似たような状況になっているらしい。http://hotwired.goo.ne.jp/news/culture/story/20050725201.html