2006-04-22

[][]進化のスピードと環境変化への対応 進化のスピードと環境変化への対応 - Nao_uの日記 を含むブックマーク はてなブックマーク - 進化のスピードと環境変化への対応 - Nao_uの日記 進化のスピードと環境変化への対応 - Nao_uの日記 のブックマークコメント

恐竜の絶滅の本当の原因は、恐竜の特徴である巨大な体ゆえの「進化のスピードの低下」にある。地球上の生物は、「進化」を繰り返すことにより、環境の変化に対応したり、他の生物との競合関係に打ち勝ってきた。進化は、親から子に遺伝子が受け継がれる過程での遺伝子の(突然変異などによる)微妙な変化により引き起こされるため、進化のスピードはその生物の世代交代のスピードに比例する。つまり、20日で成体となり子供を生み始めるハツカネズミの方が、成体になるのに20年かかる人間よりも進化のスピードは365倍速いのである。

 ただし、この「進化のスピード」は、環境に大きな変化が無い時期には大した差となっては現れない。そんな時代には、「進化のスピード」よりも、大きな体ゆえの「強さ」だとか「体積に対する表面積の小ささ」などが利点となり、成体になるのに時間がかかる巨大生物が繁栄することができるのである。恐竜の繁栄の時代はまさにこんな時代であった。今の人間の繁栄も、ここ200万年ほど続いている比較的安定した環境にささえられている。

 しかし、地球の平均気温、太陽の日照時間、などの環境が何らかの原因で(例えば、地上に落ちた巨大隕石の影響で)急激に変化する時期には、「進化のスピード」の遅い巨大生物は環境の変化について行けず絶滅し、世代交代によってすばやい進化により環境に適応できる「進化のスピード」の速い昆虫や小動物などの小さな生物のみが生き残るのである。(ちなみに、実は鳥類が恐竜の子孫であることが最近の研究で明らかになってきたが、これも、小型の恐竜が環境の変化に対応してすばやく進化してできた結果と考えられる。)

生物の進化に限らず、業界の構成や会社や組織に関してもそうだし、ソフトウェアで構築されたライブラリやミドルウェアに対しても言える事だけど、比較的安定した環境の中では、システムは時間が経てば経つほど図体が大きくなってくる。巨大であるがゆえに初めて可能になるようなスケールメリットも存在するけれど、体の大きさがある一定の閾値を超えてしまうと、新陳代謝が悪くなって融通が利かなくなったり、環境の変化に対応しにくくなるなどの弊害もでてくる。

そのような弊害の悪影響を少しでも減らそうと思うならば、巨大な一枚岩になっている大きくて硬いシステムを構築するのではなく、互いに直行して分散した要素が連携を取りながら緩やかに繋がっている有機体のような仕組みを作る方が、必要に応じて新しいものを足したり、設計の古くなった部分を切り捨てて新しいものに置き換えたりするためには有効なんだろうと思う。

図体の大きなものが変わろうと思っても、体が大きいだけにちょっと方向転換するだけでも大きな負荷がかかってしまうし、問題が根の深いところにまで入り込んでしまっているときには、体全体に影響しかねない大規模な手術が必要になってしまうこともある。

大規模なシステムでないと効率よく実行することができない事もある反面、このような変化に耐えられるように常に短いサイクルで進化し、適応できるような部分を残しておかないと、大きな環境の変化の中で恐竜のように絶滅するしかない、なんて道をたどることになってしまうかもしれない。