■ 枕草子
春は設計
まったく白紙のままの、要求は少しも決まらないで、裁断された議事録の細くたなびきたる。
夏は実装
定時過ぎはさらなり。終電もなほ、プログラマの多く乗り逃したる。
またただ1人2人など、(力尽きて)儚く椅子に突っ伏して寝るもをかし。徹夜するもをかし。
秋はテスト
夕日のさす頃にようやく仕事をする気持ちになりたるに、(定時までに)お客様のところへ確認へ行くとて、3人4人、2人3人など慌てて飛び出していく様などあはれなり。
まいて重役などの連ねたるが、肩を落として客先へ謝罪に行くのもいとをかし。
日入り果てて、(会議室から聞こえる)怒声、罵声などはまたいふべきにもあらず。
冬は運用
システムの落ちたるはいふべきにあらず。データの不整合も、またさらでも、不審な動作にログなどを急ぎ開いて、追いかけて回るもいとつきづきし。
昼になりて、障害票を持ていけば、上司の顔色が白く灰がちになりてわろし。
いとあはれなり。
■ 天空のプログラマ
「あたし、他にもたくさんソースを受け継いだわ。
…絶対いじっちゃいけない関数もあるの。
「いじっちゃいけない関数?
「滅びの関数。
動きさえすれば、悪いコードでもつっこまなきゃいけないって。
でも決していじるなって。
教わったとき、怖くて眠れなかった…
あのコードは直しちゃいけないものだったのよ。
だからソースの奥に隠してあって、検収のときにしか使わなかったんだわ。
前のPGも、前の前のPGも、その前のPGもそうしてきたんだもの。
あんな関数、早く捨ててしまえばよかった!
身につまされる。捨ててしまえばよかった。
「PGをのせて」
作曲・編曲/久石 譲
あの地平線 輝くのは
どこかにバグが かくれているから
たくさんの灯が なつかしいのは
あのどれか ひとつに 家があるから
窓から夜景を見るたびにこの歌を思い出す。