2005-04-01

今日は先輩の送別会。2次会にも参加。普段はあまり2次会には出ないけれど、今日は最後まで潰れずに起きていられた。飲めば飲むほど元気になる人、普段の溜まったストレスを吐き出して酔いつぶれる人、ずっとものすごい勢いで喋り続ける人など、飲み方も人それぞれで面白い。

午前3時に帰宅。この状態では明日は確実に仕事にならない。

おまえのバスの三連音が

どんなぐあひに鳴っていたかを

おそらくお前はわかっていまい

その純朴さ、希みに充ちた楽しさは

ほとんど俺を草葉のようにふるわせた

もしお前がその音の特性や

無数の立派な順列を

はっきり知って自由にいつでも使えるならば

お前は辛くてそしてかがやく天の仕事もするだろう

泰西著名の楽人達が

幼齢弦や鍵器をとって

すでに一家をなしたがように

おまえはその頃

この国に有る皮革の鼓器と

竹で作った管をとった

けれどもいまごろちょうどお前の年頃で

お前の素質と力をもっているものは

町と村との一万人のなかになら

おそらく五人はあるだろう

しかしそれらの人のどの人もまたどの人も

五年の間にそれを大抵なくすのだ

生活のためにけずられたり

自分でそれをなくすのだ

全ての才や力や材というものは

人にとどまるものではない

人さへ人にとどまらぬ

云はなかったが

おれは四月はもう学校には居ないのだ

恐らく暗くけわしい道を歩くだろう

その後でおまへの今の力がにぶり

きれいな音の正しい調子とその明るさを失って

ふたたび回復できないならば

おれはもうお前をみない

なぜならおれは

少しぐらいの仕事ができて

そいつに腰かけているような

そんな多数を一番嫌に思うのだ

もしお前が

よく聞いてくれ

一人のやさしい娘をおもうようになるその時

おまえに無数の影と光の像があらわれる

お前はそれを音にするのだ

みんなが町で暮らしたり

一日遊んでいる時に

お前は一人であの石原の草を刈る

その寂しさでお前は音を作るのだ

多くの侮辱や窮乏の

それらを噛んで歌うのだ

もしも楽器が無かったら

いいかお前はおれの弟子なのだ

ちからの限り

そらいっぱいの

光でできたパイプオルガンを弾くがいい

          

                  『告別』 宮沢賢治