2005-03-28

[]エースコンバット5におけるMaya活用例 エースコンバット5におけるMaya活用例 - Nao_uの日記 を含むブックマーク はてなブックマーク - エースコンバット5におけるMaya活用例 - Nao_uの日記 エースコンバット5におけるMaya活用例 - Nao_uの日記 のブックマークコメント

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これを「ACE5」では、コンバータをMaya上に実装させ、グラフィックデータを直接DTL-T10000に送れるようにしました。その上でオーサリングもデュアルショックではなく、マウスオペレーションで行えるように変更しました。DTL-T10000のビデオメモリにアクセスするのは同じですが、それをWindows上からアクセスできるようにしたのです。これにより操作が直感的になり、発展性を見越した開発環境を構築できました。

  またマップ制作に伴うさまざまな作業を、Maya上からワンクリックで行えるようにバッチ処理化し、作業効率を上げると共に、ケアレスミスを減らすようにしました。これについては、プログラムの志磨から改めて説明します。他にゲーム中で全天を覆う天球を編集するエディターや、雲や樹木などの分布、天候やエフェクトの設定、各オブジェクトに適用されるライティング等、その他様々な部分を制御する統合オーサリングツールをWindows上のツールとして作成しました。

このように、Mayaと内製Windowsツールそれぞれで出来る事をうまくまとめ上げ、統合していく。それによって物量の拡大に対応を図りました。

エースコンバット5の開発では、デザイナ向けのツールとしてMayaとWindowsツールを中心とした統合開発環境を用意したようだ。PS2なら、実機ツールでもUSB経由でマウスとキーボードを使うこともできるけれど、それでもWindowsから直接制御するツールを作ったあたりは興味深い。

基本的にマップごとに、この工程を一人のデザイナーが進めることになります。

我々のマップ制作は少々独特で、あまり分業をしておりません。通常はモデリングやテクスチャ、ライティングなど各パート毎で分業を行うかと思います。しかし「エースコンバット」シリーズの場合は、リソースの配分や細部のデザインをある程度担当デザイナーに任せる方がパフォーマンスを発揮できる、という仮説から、この様なワークフローをとっております。一人の人間が一つのマップを完遂することで、制作に対するモチベーションを維持したり、手順の把握によるデザイナー間の情報共有が期待できる制作方法です。

海外のゲーム開発では一つの素材をモデリング・テクスチャ・ライティングなどの複数の作業に分割し、担当を分けて数人でパイプライン的に作ることが多いようだが、大量の物量を高いクオリティで必要とする場面ではモデリングからテクスチャ、ライティングなどを一人の担当者がすべて責任を持って作る方が、最終的にはクオリティ・効率ともに良くなるように思う。このあたり、国内と海外では製作工程や人材に対する考え方に違いがあるのだろうか。

それにしても、フライトシミュレーター系のゲームでありながら開発期間3年、メンバーがピーク時には100人という規模には驚いた。プレイしていないのでゲーム内容についてはわからないが、映像を見る限りではPS2とは思えない綺麗さに見えるけれど、あれだけのクオリティを出すにはやはりそれ相応のコストがかかるようだ。これだけの長い開発期間をかけられるタイトルだからこそここまでツールの整備が行き届いたのだろうけど、ここで一度ツールを整備した経験は、きっと次回作以降にも大きく生かされるのだろう。いつまでも製作工程を力技でやりくりしてジリ貧のまま進むことは許されない。

インフラとは、経済力が向上したからやるのではなく、経済力を向上するためにやるものだ

         塩野七生ローマ人の物語Ⅹ 全ての道はローマに通ず」より

余裕がないから開発環境を整えられないのではない。

余裕を作るために、開発環境を整える必要がある。